昨晩は風が吹いていた。

秋が深まっていくけれど、風はまだ生温かくて、それからやっぱり雨を連れてきた。

ある映画作家のインタビュー/回顧録を読んでいる。私の知らない過去の時間を実際に生きた人々がおり、なおかつこの同じ時点に今なお存在しているということ。時間というものの幅。

今から六〇年、七〇年前の日本は、まったく別の国のようにも思えるし、実際にはそれほど変わっていないのかもしれないとも思う。

例えば大江健三郎。彼の書く山深い村々。限界集落が取り沙汰されて長くなるけれど、そうしたとき、その村々はまったくの虚構であるかのようにさえ感じられる。しかし、その場所はやはりあったのだということ。そこにも風は吹いたのだということ。

過去はすぐ側にある。歴史は繰り返さず、ただすぐ近くに生き延びている。